導入背景:Excelによる財務報告の課題
ドイツ・フランクフルトに本社を置くSAMSONのグループ・コントローリング部門は、グローバルに展開する約40カ国、60社の財務管理および財務データの統合を担当しています。
これまで、報告書や財務諸表の作成にはExcelを使用していましたが、手作業による負担が大きく、報告の頻度や詳細度に限界がありました。特に、データの収集・処理の非効率性が問題となり、グループ全体の財務管理において、標準化や透明性の欠如という課題が浮き彫りになっていました。その結果、各拠点が個別にExcelファイルを管理する方法は、もはや現実的ではなくなりました。
Jedox導入の決定 – 財務チームの迅速な対応
こうした課題を解決するため、財務チームは、できるだけ早く包括的なFP&A(財務計画・分析)ソフトウェアを導入することを決定しました。
新たに就任したCFOの提案により、彼のこれまでの経験から高く評価されていたJedoxが選ばれました。Jedoxの最大の特長は、Excelとの高い親和性にあり、これにより財務チームはIT部門に依存せず、自社のリソースのみで新しい報告環境を構築し、グローバル各拠点のコントローリング部門に迅速に展開することができました。
ITサポートなしでの運用と拡張性の確保
財務チームにとって、IT部門の支援を必要とせずに運用できること、および必要に応じて新機能を柔軟に追加できることが、システム選定における重要なポイントでした。
Jedoxは、その高い柔軟性と直感的な操作性により、これらの要件を満たし、各拠点の財務担当者がスムーズに活用できる環境を提供しました。さらに、JedoxのIDW PS 880(ドイツの監査基準)認証を取得した「Jedox Financial Consolidation」機能により、財務諸表の作成・表示が可能となり、これが導入の大きな決め手となりました。
導入施策:監査対応のグループ連結財務を確立
SAMSONの財務チームは、計画通りにJedoxへの移行を進め、わずか3年弱で販売・財務計画、グループコントローリング、グループ連結財務の全プロセスをJedoxへ統合しました。導入は、実現可能なステップに分割され、迅速に成果を上げることができました。
第1ステップ:販売コントロールの導入(2020年5月)
最初の取り組みとして、2020年5月に緊急性の高い販売コントロールの構築を実施しました。これにより、2020年7月には、翌年の販売計画をJedoxで作成することに成功。販売部門の再編に伴い、新たに策定された組織構造をJedox上に反映し、それに基づいた計画プロセスの再定義を行いました。
ExcelライクなWebベースの販売・財務計画の実現
プロジェクトのスケジュールを遵守するため、最初の計画にはハイブリッドアプローチが採用されました。各拠点から収集されたデータは、あらかじめ新しい販売レポート構造を含むExcelテンプレートを使用して入力され、Jedoxデータベースへ直接インポートされました。
これにより、以下のような多次元分析が可能な中央データベースが構築されました:
- 事業ユニット別
- 販売市場(業界別)
- 主要顧客別
- 製品グループ別
- 地域別
第2ステップ:財務計画の拡張とJedoxの本格活用(2020年11月)
2020年11月には、新たに収益計画、投資計画、人事計画、戦略計画、レポートを含むJedoxデータキューブを構築。これにより、販売および財務の計画・分析・評価プロセスが統合された包括的なグループコントローリングシステムが完成しました。
技術的な側面では、各子会社をWeb経由でJedoxに接続し、システム制御による役割ベースのワークフローのもと、計画データと実績データの入力・レポート取得が可能となりました。
第3ステップ:監査対応の連結財務諸表の確立(2022年)
2022年には、従来のExcelベースからJedoxの認証済み連結財務ソリューションへ移行を実施しました。このプロジェクトでは、Jedoxの専門家によるサポートのもと、迅速に連結モデルが設定され、2022年12月31日にはドイツ商法(HGB)に準拠した最初の財務諸表をJedox上で作成。Excelによるバックアップ作業は一切不要となりました。
グループ各社は、JedoxのWebベースのインターフェースを通じて、監査済みの年次財務報告書を提出し、すでに導入されていたグループコントローリングシステムのフレームワーク内で統合プロセスが進行。
Jedoxのワークフローにより、明確な責任範囲のもと、すべてのプロセスが監査対応の形でシステムに記録される仕組みが構築されました。
データの正確性とセキュリティを担保するための主な機能:
- 標準化されたデータ入力画面
- 承認ルーチンの明確化
- 自動データ集約・通貨換算・グループ内取引の照合
Jedox導入によるメリット – 透明性とデータ比較の強化
SAMSONのグループコントローリング部門のディレクター、ハンス・ヴェルナー氏は、Jedox導入により、過去のデータとの比較や時系列分析が容易になったことを強調しています。
また、Jedoxの高度な自動化機能を活用しながらも、連結プロセスの各ステップが追跡可能であり、数値の出所が明確に把握できる点も、財務チームにとって大きなメリットとなりました。
導入効果:報告業務を統一し、透明性と効率を向上
SAMSONは、全世界の子会社に共通の報告システムを導入しています。Jedoxの標準化、自動化、データ入力やプロセスの追跡機能により、透明性が高く、監査対応が可能な効率的な法定報告(財務連結を含む)が実現されました。
SAMSONのグループコントローリングディレクターであるハンス・ヴェルナー氏は、次のように述べています。
「当社では、すべてのコア業務をJedox上で一元管理し、販売・財務コントロール、マネジメントレポート、財務連結を単一の中央データベースで運用しています。」
スムーズなExcelからの移行
ハンス・ヴェルナー氏は、ExcelからJedoxへの移行が非常にスムーズに進んだことを高く評価しています。
「段階的かつ“オープンハート”での導入は大成功でした。最初は小規模な導入から始め、徐々に報告の範囲、複雑さ、頻度を拡大しました。約60社の子会社もスムーズに受け入れてくれました。」
振り返ると、ヴェルナー氏はこう語ります。
「かつて、Excelに代わる選択肢がないと思っていたのが信じられません。Jedoxという単一の信頼できる情報源(Single Source of Truth)を導入したことで、Excelの混乱は過去のものとなりました。」
グループ全体での一元化とその効果
グループコーポレートコントローラーのトーステン・スパック氏も、Jedox導入後の社内のポジティブな反応を次のように述べています。
「各子会社は、統一された報告システムの恩恵を実感しており、自社の報告にも同じデータプールを活用できるため、一貫性が確保されることを高く評価しています。」
この一元化により、各拠点が統一されたプラットフォーム上でデータを管理し、より正確で効率的な報告が可能になりました。
財務部門が運用する将来を見据えたプラットフォーム
現在、財務部門はJedoxプラットフォームを運用し、グループ全体の拡張ニーズを各機能部門へ展開しています。財務部門がアプリケーションの導入を担当し、各部門は自身のデータを管理・活用する形で運用が進められています。
すでに、財務や販売部門に加え、人事部門でもJedoxのレポート機能を活用しており、今後は生産部門やその他の部門への展開も計画されています。
次なるステップ:ESG報告の導入計画
SAMSONでは、今後の取り組みとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)報告をJedox上で実施する計画です。このプロセスは財務連結と同様に、各部門からESGデータを収集・処理し、レポートとして提示することが求められます。
Jedoxのグローバルに認知されたプラットフォームを活用することで、SAMSONは持続可能性報告(サステナビリティレポート)の強化にも対応できる体制を整えています。
トーステン・スパック氏は、次のように述べています。
「Jedoxは、全世界の子会社で受け入れられています。財務チームは、Excelと親和性の高いJedoxを使いこなし、各拠点からもポジティブなフィードバックを得ています。」
SAMSON
ドイツ・フランクフルトに本社を構え、プロセス産業向けの高品質なバルブや制御システムの開発・製造において世界をリードする企業です。1907年の創業以来、革新性、信頼性、技術的卓越性を追求してきました。最先端のバルブ技術、制御バルブ、そして自動化ソリューションを含み、化学、石油化学、エネルギー、食品・飲料産業、地域暖房といった幅広い分野で活用されています。また、世界約40カ国に子会社や営業拠点を持ち、各顧客に最適化されたソリューションと高品質なサービスを提供しています。