世界的な健康危機が到来したとき、多くの企業は航海中に濃霧に包まれるような状況に直面しました。それまで頼りにしていたプロセスや予測モデルが機能しなくなり、新たな方法を模索せざるを得なくなったのです。この変化の中で、FP&A（財務計画および分析）チームはどのようにして不確実な未来を予測し、組織を前進させる洞察を生み出すべきなのでしょうか。本記事では、予測の新しい常識と、それを実現するためのアプローチを探ります。
目次
- 予測モデルの限界と変化
- VUCA時代における予測の重要性
- 柔軟な予測期間と目標設定
- 報告頻度と効率化の課題
- 新たなテクノロジーと投資の必要性
- 過去の教訓を活かした未来への対応
1. 予測モデルの限界と変化
AIを活用した予測モデルでさえ、急激に変化する環境ではその有効性を失うことがあります。過去20年間のデータに基づくモデルは、パンデミックのような予期せぬ出来事には対応できません。ジョージ・ボックスの言葉にあるように、「すべてのモデルは間違っているが、中には役に立つものもある」のです。FP&Aチームは、既存のモデルを過信せず、状況に応じて更新や見直しを行う柔軟性が求められます。
2. VUCA時代における予測の重要性
VUCA（変動性、不確実性、複雑性、曖昧性）の時代においては、単一の見通しではなく複数のシナリオを予測することが重要です。私の経験では、4つの予測シナリオを設定するのが最適です。多すぎると混乱を招き、少なすぎると偏った予測になりがちです。FP&Aチームは、これらの予測を基に柔軟な意思決定をサポートする役割を担います。
3. 柔軟な予測期間と目標設定
予測期間は、組織や状況に応じて柔軟に設定する必要があります。また、予測の精度を高めるために、FP&Aチームは明確かつ簡潔なコミュニケーションを行い、ビジネスパートナーや経営陣との信頼関係を構築することが重要です。これにより、予測の結果が組織全体で共有され、意思決定に役立てられます。
4. 報告頻度と効率化の課題
かつては月次予測が主流でしたが、現在では週次や日次の更新が求められることもあります。しかし、頻繁な更新はFP&Aチームに大きな負担をかけます。たとえば、1回の予測作成に4時間かかる場合、それを毎日行うことは非現実的です。この課題に対処するためには、プロセスの効率化と自動化が必要です。
5. 新たなテクノロジーと投資の必要性
予測やモデルの更新に必要な時間を短縮するテクノロジーは既に存在しています。しかし、それを活用するにはテクノロジー、人材、プロセスへの投資が不可欠です。現状を維持するだけでなく、新たな「ニューノーマル」に適応し、さらにその先を見据えた変革を推進するためには、この投資が重要です。
6. 過去の教訓を活かした未来への対応
過去の危機的状況から得た知識や技術は、未来の課題を乗り越えるための基盤となります。第二次世界大戦後、軍事技術が民間航空に応用されたように、現在のテクノロジーやプロセスも、未来のビジネス環境に適応させることが可能です。FP&Aチームは、この進化を支える役割を担い続けるでしょう。
まとめ
FP&Aの役割は、単なるデータ分析や予測作成にとどまりません。不確実性の高い環境で柔軟かつ適切な意思決定をサポートすることが求められます。そのためには、予測プロセスの見直し、テクノロジーの活用、そして効果的なコミュニケーションが不可欠です。あなたの組織は、次の一歩を踏み出す準備ができていますか？
ブライアン・カリッシュ
ブライアン・カリッシュは、財務、FP&A、財務、投資家向け広報の分野で20年以上の経験を持つ元エグゼクティブ・ディレクターです。FHLB、ワシントン・ミューチュアル/JPモルガン、NRUCFC、フィフス・サード、ファニーメイで財務および財務のポジションを歴任しました。北米、ヨーロッパ、アジア、そして間もなく南米でFP&Aラウンドテーブル会議を開催し、大規模な聴衆から小規模な聴衆まで、世界中で講演を行っています。2014年、Brian KalishはGlobal Certified Corporate FP&A Professionalの称号を授与されました。